|
建築関係の学問の中でも、特に都市に焦点を当てて研究を行うのが「都市工学」です。「建築工学」や「土木工学」が建築物や構造物に主眼を置くのに対して、「都市工学」では、都市全体の様相を考える点に特徴があります。さまざまなものが溢れ、人が過密に集中する都市では、全体のことを考えて都市を計画する必要があります。たとえば無計画に道路を作るとあちこちで車が渋滞してしまったり、高層ビルが乱立するとビル風がひどくなったり、熱がこもって夏にヒートアイランド現象と呼ばれる熱帯夜状態を作り出してしまうなどの問題が生じます。そこで建築物や構造物を作る際には、人々にとってストレスが少なく、機能的な街にするための街全体のデザインを考えなくてはなりません。こうした分野を専門的に扱うのが「都市工学」です。
「都市工学」が目指すものは、デザイン的にも生活環境としても、魅力あふれる都市空間の実現です。道路や水道、電気などのライフラインと建物がどのように配置されれば、機能的で快適な生活を実現できるかなどを、理論と実践とを織り交ぜながら研究します。
学ぶ分野としては、「構造物の計画・設計」「施工技術」「建築学」「製図」といった建物や構造物を作るための基礎分野と、都市を作るために必要な「交通計画」「都市計画」「都市環境計画」「自然災害」「環境学」などの専門的な内容とに分けられます。
「構造物の計画・設計」「施工技術」では、大きな構造物を作るために必要な、計画から施工までの一連の流れを学びます。「建築学」では、都市や各地域ごとの歴史や個性を学びながら、その地域に適した建築物のあり方を学びます。たとえば多雪地帯ならば、その地域特有の耐雪対策の歴史を踏まえた上で、今の時代によりよい構造物を作るにはどうしたらいいかを学びます。「製図」では、CAD(コンピュータを使った設計)などを用いながら製図し、その作業を通してよりよい構造物について考えます。
「都市計画」では、冒頭で紹介した交通渋滞や、ヒートアイランド現象、人口過密など、現代の都市ならではの問題について考えた上で、理想的な都市を作るための計画法を学びます。理論だけではなく製図などの実習も行い、具体的な方法を考察します。「都市環境計画」では、樹木や水辺などの環境を維持しつつ、人々が暮らしやすい都市を作り上げるための理論や、実際に作り上げた都市をどのように発展させるかなど、自然環境と都市とがどのように組み合わされば理想的な都市を作ることができるかなどを考えます。
「自然災害」では、都市と災害の関係について学びます。とりわけ大都会では建物も土木構造物も密集しているため、たとえば地震で1つ建物が倒壊すれば周辺に多大な被害を及ぼしますし、道路が狭い箇所では火災が起きても消防車が入れないなど、多くの問題があります。そこで、耐震・免震構造を備えた建物や、耐火性に優れた素材を使った建物、地盤そのものの構造や性質と構造物との関係の研究などが必要となります。
「環境学」では、大気や水質の汚染といった地球規模の環境問題について考え、こうした問題をクリアするための環境システムのあり方などについて研究します。都市の場合、車が密集し、多くの人が水を使うために、高度な大気汚染や水質汚染対策が必要です。そのための新技術の開発も進んでおり、たとえばバイオの技術を利用した下水浄化システムの導入などがあります。また、現在維持している環境を保全するための対策も講じていきます。
緑が少ない、災害対策が不十分であるなど、都市を取り巻く問題はさまざまに論じられることでしょう。新しく開発される地域では、開発当初から綿密な都市計画を行うなど、長いスパンに立った「都市計画」はますます重要となってきます。大気汚染や汚水処理など、都市を取り巻く環境問題も、解決しなければならない問題です。
こうした視点を見据えた広がりのある学問が「都市工学」なのです。
■ 都市工学に関連する学問
| 環境(工学系) |
■ 他の分野の学問ナビを読む
|