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■ 自然人類学

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直立歩行―進化への鍵
直立歩行―進化への鍵

直立歩行―進化への鍵

私たちヒトは背骨を垂直に立てて歩く。これを直立(二足)歩行とよぶ。普段気にならないことだが、日常的にこのような移動運動を行う動物は稀である(他にはペンギンくらいしかいない)。二足で移動するため、木登りでもしない限り、ヒトは手を移動のために使うことがない。その制約がないため、ヒトの手は、ものを操作するために特殊化した。この手のおかげでヒトは道具に依存した生活を送り、文明を作るに至っている。このように、直立歩行はヒトの進化に非常に大きな影響を与えたのだが、なぜ、ヒトの祖先が直立歩行を始めたかは明らかでない。直立歩行の起源を巡る学説は10以上あるが、それを検証する直接証拠が今後見つかる可能性はないだろうから、解決はしないだろう。しかし、わからないとあきらめては学問の豊かさが生まれない。
この本の著者の専門はアフリカ類人猿の生態学である。その観察を元に、専門家の間では「採食姿勢適応説」と呼ばれる直立歩行進化のシナリオを描いている。この本の優れているところは、さまざまな種類の間接的な証拠から、大きな話(理論)を紡いでいく、その思考方法にある。
この本を薦める理由は、内容が正しいからではなく(私の見解では、化石証拠の解釈に偏った見方が多々ある)、人類進化という再現性のない事象を人類学者がどのように探求していくのかを、鮮やかに見せてくれるからである。

書評執筆者

先生のお名前 中務 真人 (なかつかさ まさと)
所属 / 役職名 京都大学大学院 理学研究科 准教授
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自然人類学研究室

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