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音楽の根源にあるもの
民族音楽学者の小泉文夫は、学生時代の私にとってほとんどアイドル的な存在だった。世界中を旅してあらゆる音楽を聴き、魅力的なエッセイを書き、次々に斬新な研究方法を開拓し、そして毎週ラジオで世界の民族音楽を素敵な語り口で紹介し ― 「音楽研究」と言えばバッハやベートーヴェンやワーグナーといったクラシック音楽の研究とほとんど同義だった時代にあって(ポピュラー音楽のような「低級な」音楽は研究の対象などにはならないとされていたような時代だったのだ!)、小泉は「クラシックの他にも様々な音楽のありようが世界には存在する」ということに目を開かせてくれた、日本で最初の人だった。結局私は西洋音楽(つまりクラシック音楽)の研究者となったが、それでも常に「西洋クラシックも世界の数ある民族音楽の一つ以上でも以下でもない」ということを忘れたことはない。
「西洋クラシックを民族音楽の一つとして研究する」 ― 私のこの研究スタンスの出発点となったのが、この本との出合いだった気がする。
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