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乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない (集英社新書)
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乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない
現在、世の中の諸々のことを経済学で切って見せるような本がたくさん出回っているが、いずれも需要と供給のレトリックを無理に当て嵌めて、世間の歓心を買っているように感じられる。そのため、最初は面白くても直に飽きられてしまうような懸念が私にはある。それらと比べて、小説家である著者が書いたこの本は、経済学者としての目で読んでもとても興味深く感じられた。
本書は、経済学を学ぶと、経済的な利益や会社の儲けに汲々とするような人間になるのではないかという、もしかしたら一部の人々のなかにあるかもしれない誤った考えを訂正してくれる内容を持っている。著者は、人間を勝ち負けで判断し、お金で決着を付けようとする現代日本の風潮を批判する。そして、生きることに幸福でありたいという人間の自然な思いが、経済という活動の根っこにあると主張するのである。実は、これこそ経済学の核心にある思いであり、小説家としての直感は著者自身の思惑を超えて本質を的確に捉えている。
その他、経済とはただ循環することだ、という風に聞いて初めて納得できたというくだりは面白かった。また、エコノミストは現在の唯一の思想家である、という言い回しからは、経済学を学ぶのは経済学者に騙されないようにするためである、という皮肉を思い出した。このように、いたるところに、平易な文章に載せられて読み飛ばすのには惜しい洞察が散りばめられた著作である。
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