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歯学というと、歯や歯を支える歯茎などの疾患、すなわち虫歯や歯周病の治療や、歯並びを治す矯正歯科が私たちにとっての身近な領域でしょう。しかし歯学の対象はもっと広く、歯・顎・顔面・口腔を守備範囲とするもので、そこに生じる疾患や異常について診断し、治療を行うための研究をする学問です。
歯学の領域としては、「基礎歯科学」「病態化学系歯科学」「保存治療系歯科学」「補綴理工系歯科学」「外科歯科学」「矯正・小児系歯科学」「歯周治療系歯科学」「社会系歯科学」があります。
「基礎歯科学」では、歯・顎・顔面・口腔を対象に、解剖学や組織、発生(細胞がどのように分化してさまざまな体の部位になるか)、生理、生化学(体内で起こる化学反応)、病理(病気の組織の状態)、薬理(薬が体に及ぼす作用)など、その形態や機能について研究します。また、口の中にはさまざまな細菌がいますから、口腔細菌学という領域もあります。
「病態化学系歯科学」は、顎・顔面・口腔に関わる病気について研究する領域で、顎・顔面・口腔に発生する癌や、免疫や感染・炎症などについて研究します。また、歯医者さんに行くとよくレントゲンを撮影しますが、こうした放射線を使った診断についても研究します。
「保存治療系歯科学」は主に虫歯の治療法について、「補綴理工系歯科学」は差し歯やインプラント義歯、さまざまな入れ歯(総入れ歯や部分入れ歯など)について、歯科材料や器械器具の使い方を含めて研究します。
「外科歯科学」は、顔面や顎の手術について研究する領域で、麻酔も含みます。「矯正・小児系歯科学」は、乳歯から永久歯への生え変わりなど大人に比べて変化の著しい小児期の歯科や、若いうちに行うのが望ましい歯並びの矯正について研究します。「歯周治療系歯科学」は、生活習慣病として多くの大人が患っている歯周病について研究する領域です。
「社会系歯科学」は、口腔内を清潔に保つ方法や、虫歯や歯周病の予防法を研究し、それらを地域社会や学校、職場などを通して市民に浸透させる手法について研究する領域です。ほかに、歯科の医療保健制度や歯科医師と法律、歯科診療所の経営分析などを行う領域、さらに歯型や治療歴は個人を特定する有力な手がかりとなりますので、事故や犯罪に関連して歯科学を活用するための「歯科法医学」という領域もあります。
また近年、高齢化社会に対応し、老年特有の歯に関わる問題(入れ歯を使用すると口腔内に細菌が繁殖しやすいため清潔に保つ方法や、老年になってもなるべく多くの自分の歯を残す方法など)の研究が盛んになっています。いっぽう、失われた歯を再建するためには、これまで人工素材を用いる手法が主流であったのに対し、生命科学の進歩によって、歯の発生機序を明らかにすることで歯を再生させようという研究も進められています。
歯・顎・顔面・口腔のもつ機能は、単に食べ物を咀嚼するだけでなく、食べる楽しみにつながり、食生活を通じて健康な生活を送る上での重要な役割を担っています。さらに、歯・顎・顔面・口腔は、発音や審美性にとっても大切な要素です。歯科学は、人々がより健康に生きるための、最初の一歩を担っている領域であると言えるでしょう。
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