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■ 哲学

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道徳の系譜 (岩波文庫)
道徳の系譜 (岩波文庫)

道徳の系譜 (岩波文庫)

大学でさまざまな哲学者のテクストを購読するが、まずいちばん反応があるのが、この『道徳の系譜』。はじめに入るには易しいとはいえないが、近代哲学では哲学のテクストはどれもかなり難しい。参考までに言うとデカルト(『方法叙説』)、キルケゴール(『死に至る病』)、社会哲学系ではロック・ルソー(『統治論』『社会契約論』)などは比較的読みやすい。逆に超難解がヘーゲル、フッサール。
『道徳の系譜』の中味は、キリスト教的「理想」の徹底批判。ヨーロッパでは、キリスト教を通して、人間の理想は、長く、禁欲、利他、道徳の概念に定位された。「よい」とは、自分を捨てること、他の(神・他者)のために生きること、つまり生のエロスを敵視することを意味した。人間にとって「よい」の本来は"豊かに生きること"で、利他や道徳は、この欲望の相互的なズレを調整するためのものだが、いつの間にかこちらを人間の理想とする「転倒」が生じてしまった。この奇妙な転倒の由来を歴史的にたどってみると「ルサンチマン」という概念にゆきつく……。とまあ、そんな具合だが、この「ルサンチマン」の概念によって、鋭敏な読者は、単なるキリスト教批判ではなく、人間精神の隠された「反動諸力」についての本質論をここから受け取るだろう。多くの読者は、この概念によって、自分のうちの何かに"思い当たる"。そして、自分についてもっと考えてみようと促されると思う。
【編集部注】 『道徳の系譜』は、ちくま学芸文庫(ニーチェ全集〈11〉『善悪の彼岸 道徳の系譜』)でも読めます。

書評執筆者

先生のお名前 竹田 青嗣 (たけだ せいじ)
所属 / 役職名 早稲田大学 国際教養学部 教授
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