|
パイドロス (岩波文庫)
大学生になって「哲学」に興味を引かれ、キルケゴールやカントから入ろうとしたが、恐ろしく難解で何度も挫折した経験がある。はじめに知っておくといいのは、哲学の文章は日本語に訳してあってもまず読めないものだということ。楽譜のようなもので、読めるようになるまで必ず一定持続的な訓練が必要だ。だから、哲学の面白さが伝わる三冊、というのはけっこう難しい。哲学の場合、入門書と哲学書とでは難易度のレベルが大きすぎるので、入門書がなかなか入り口になりにくいからだ。
そこで、とりあえず読んで理解できる面白い「哲学書」という趣旨で、『パイドロス』を選んだ。中味は「恋愛の本質は何か?」。哲学ではよく、「世界とは何か」「人生とは何か」という問い方をする。これは世界の「本質」は何かという意味で、「本質」を問う方法である。「本質」なんか問えるのかと思うかも知れないが、それがちゃんと一定の方法がある。プラトンはここで恋愛の「本質」を問うが、近代哲学のように概念と論理だけを使うのではなく、自覚的に「神話ミス」、つまり「たとえ話」を使っている。だから哲学の問いとしても典型的だし、入り口としても入りやすい。恋愛の情熱にはいろんな側面があるが、いちばん大事なのは、「生の意味」を一挙に満たすような「ほんとう」への欲望という不思議な性格をもっている、というのが、プラトンの主張。さて、諸君ならどう考える?
|