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非ユダヤ的ユダヤ人
学問を志す日本の若者が大学に入って世界の知性の思想を学ぼうとするとき、なんといっても魅力的なのは西欧近代の思想家たちであろう。近代聖書批判を最初に試みた哲学者スピノザ。科学的唯物論で共産主義思想の生みの親マルクス。無意識の領域を開拓した精神分析学の創始者フロイト。相対性理論で物理学の発想を覆したアインシュタイン。近代社会学の大成者の一人デュルケーム。ボルシェヴィキ革命の立役者トロツキー。現代哲学の巨人で現象学を開いたフッサール。それをフランスに紹介し他者論を切り開いたレヴィナス。さらに、ベルクソン、ブーバー、ヴィトゲンシュタイン、ベンヤミン、フロム、アドルノ、フランクル、シモーヌ・ヴェイユ、文学や芸術では、ハイネ、カフカ、メンデルスゾーン、マーラー、シャガールなど。私たちはこれらの人々を「西欧人」と思って見るが、実はみなユダヤ系である。
キリスト教が出現して以来、近代に至るまで、ユダヤ人が世界史に登場することはほとんどないが、なぜ突如として、近代西欧にこれほどのユダヤ系知識人が陸続と出現することになったのだろうか。かれらは一様に、自分は何者かと悩み、アイデンティティの葛藤に苦しんだのである。その宗教ゆえに、キリスト教世界で差別され迫害され続けたユダヤ人が、近代にさまざまな葛藤と知的刺激の中でいかに生き抜いてきたか、ひとりの思想家ドイッチャーの波乱の人生が、その足跡を垣間見せてくれる。
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