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細胞ががんになるとき―がんウィルスの遺伝子をめぐって
ノーベル賞級のがん研究者である花房秀三郎博士の業績を中心に、初期のがんウイルス研究の展開の様子を、夫人であり共同研究者であった故・花房照子博士が緻密に描写した歴史的名著。これを読んで花房博士に憧れ、がんウイルス研究の道を目指した医学生も多い。
花房博士はノーベル賞受賞者であるハロルド・バーマス、マイケル・ビショップと一緒にラスカー賞を受賞しており、ノーベル賞も同時受賞であっておかしくはなかった。ニワトリの肉腫ウイルスを用いて、細胞をがん化する遺伝子の存在を示す初期データを提示し、がん遺伝子を持たないウイルスが正常の細胞からそれを取り込む過程を再現して見せた。その後「がんの分子生物学」の大発展へと繋がった最初期の仕事を、こつこつと展開したパイオニアであり、世界と対抗できる日本人の弟子を複数育てた功績も大きい。
本書の記載内容は、いまだに全く正確さを失っていない。その点ではプルシナーの「プリオン説」とは大違いである(因みに、ハロルド・バーマスの友人であり、小生が師事したレトロウイルス研究者、ブルース・チーズブロゥの業績も、最初の発表から30年以上が経過した現在に至っても、一点の修正もなくそのまま通用する。それどころか、現在でも世界の複数のグループが彼の初期の論文の検証を続けている。科学者とは、そのような仕事をするべきである)。
このような優れた「古典」が、絶版になってしまうのは実に惜しいことである。 ※「書評執筆者からのコメント」があります。執筆者ページも併せてお読みください。
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