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調査報告「学力低下」の実態 (岩波ブックレット)
「日本の子どもたちの学力は下がってしまった。だから、ゆとり教育を見直して、授業時間を増やし、学力向上に力を注ごう。」
国を挙げた教育改革を進めるために内閣に置かれている教育再生会議が、現時点(2007年夏)において提示している学力をめぐる提案を端的にまとめてしまえば、上のようになります。はたして、日本の子どもたち学力は、一様に下がってしまったのでしょうか。
本書は、関西都市圏で行った実際の調査を基にしながら、「家庭的な背景」が子どもたちの学力に大きな影響を与えていることを浮き彫りにしています。学力の低下傾向と社会的階層とは、私たちが想像するより密接に結びついているようです。だとすれば、一様に授業時間を増やすような方策は、どれほどの効果が期待できるのでしょうか。階層性を視野におさめた上で、焦点を絞った別の施策が必要かもしれません。
……ここまで読んでくださった皆さんの中には、「そんなこと、高校生の自分たちが考えてもどうしようもないよ」と感じた方もいることでしょう。
ここで重要なのは、教育学を学ぶ上は“視点の転換”が不可欠であるという事実です。自分に与えられる教育(自分に直接かかわる授業や各種の指導・支援)に対して改善の要求はしたいけど、教育全体をどうするかまでは考えない、という「教育の消費者」の視点から脱して、自分の次に来る世代に対してどういった教育を実現化すべきか、という「教育の提供者」の視点を持つことが、教育学を学ぶ上での基本となります。ですから、ここでは思い切って、教育政策立案というスケールの大きな「提供者」の視点に立ってみませんか。もちろん、教師を目指している高校生にとっても、重要な視点を提供してくれます。
100ページにも満たない本書は、「視点の転換」のきっかけとして、気軽に手に取れる絶好の入門書かもしれません。
この本に関心を持たれた皆さんは、同じ岩波ブックレットの中から、藤田英典『教育改革のゆくえ:格差社会か共生社会か』(No.688)、佐藤学『「学び」から逃走する子どもたち』(No.524)なども是非読んでみてください。教育学への関心が一層深まることと思います 。
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