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忘れられた日本人
これは歴史学の書物というより民俗学の名著というべきものであるが、現代日本が高度成長のなかで切り捨てた一面についての現代史的証言ともいえる作品になっている(現代日本が、というよりも、高度に産業化した現代世界が、といったほうがより正しい)。歴史学のいとなみというのは、過去に生きた人たちの世界に、いわば土足でずかずか立ち入るのではなく、なるべくその時代の世界に共感の気持をもって近寄り、みずから耳を傾け目を凝らすことができるか、そこに成否がかかっている。
この本を読めば、1世紀も経たない前の日本のなかに「えっ、こんな世界があったのか」という率直な驚きを感じるのではないだろうか。そういう感じ方こそが、歴史を問う出発点である。自分に近い世界の近い過去なのに、こんなにも違う世界があった、その驚きからどこへ問いを向けるか、それは皆さん自身にかかっている。歴史への問いが始まる一つの形を、経験できるはずである。
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