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開かれた作品
ショーン・コネリー主演で映画化された推理小説『薔薇の名前』の作者、ウンベルト・エーコは、世界で最も有名な美学者かもしれません。彼がトリノ大学哲学科を卒業したときの卒業論文のタイトルは「聖トマス・アクィナスにおける美学問題」でした。そういえば『薔薇の名前』は、中世の修道院を舞台に展開する連続殺人事件をめぐる、引用の織物のような物語ですし、「笑い」というこれまた美学的な問題が背景になってもいます。
しかしエーコは、最初から大学で美学を教えていたわけではありません。卒業後に彼はイタリア国営放送(RAI)に勤務し、テレビの文化番組を担当しました。このときエーコは現代を代表する文学や音楽、視覚芸術の作家や作品に出会い、意味の不確定性を基本にしたその特徴を『開かれた作品』として理論化することになります。サッカー試合の実況放送の「美的構造」が論じられるのもエーコならではのことといえるでしょう。
訳者の篠原資明が「あとがき」で述べているように、美学の面白さは「ジャガイモやワイン」ばかりではなく「地中海の軟体動物」を味わうことで大きく広がります。少し難解であったり大部であったりしますが、『記号論』や『美の歴史』など、エーコが『開かれた作品』に続いて著した書物にもぜひ挑戦してほしいと思います。
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