書名からして、だれもが読んでおいて損はなさそうだが、本書は『診せてはいけない』(幻冬舎刊)を文庫化したもので、実は本書は将来医者になりたいと思っている人にこそ読んでほしい。
著者は総合病院の理事長でありながら、「医療事故調査会」を自ら立ち上げ、代表を務める現役医師でもある。医療事故調査会は、医療過誤訴訟などにおける鑑定をおこなっている。そんな著者だから、世の中から医療事故をなくすための提言がふんだんに語られている。
そもそも日本の医者にはレベルが低すぎる者が多すぎると、著者は手厳しい。「心臓の聴診さえまともにできない医者がザラにいる」「ほとんどの医者が薬の作用を知らない。ちゃんと説明書を読んでいないからだ」「たいがいの医者は、救急蘇生の方法を知らないし、救急診断そのものができない」……にわかには信じられない、いや信じたくない話のオンパレードだ。
昨今、医師免許の更新制が取りざたされているものの、日本医師会の猛烈な反発で当分は実現しそうにない。しかし著者が言うように、車の運転免許でさえ何年かごとに更新しなければならないのに、命を預かり人の体にメスを入れることが許されている医師免許が、一度取得すれば永久ものというのはやはりおかしい。しかも、医学の発達スピードは、自動車工学の比ではないのだ。こんなことを声高に言うのだから、おそらく著者は医師仲間に敵が多いことだろう。
だが、旧態依然とした体質では、医療事故はいつまでたってもなくならないし、訴訟社会に入りつつある日本で医者自身が窮地におちいっていくだろう。これからの時代、単にお金が稼げるからという理由で選ぶ者には、決して医者は務まらないだろう。医者になるには相当の覚悟と信念が必要だと、本書を読んで改めてそう思う。 |